塩田平一帯は、いまは長野県上田市の一部である。かつては「小県郡塩田町」だったのが、高度成長期の昭和45年(1970年)に上田市に編入合併になったものだ。平成の大合併で「○○町」が「△△市」に編入された場合、住所では「△△市○○町ほにゃらら」のように旧町名をそのまま残しているところが多いが、塩田町の場合には、「塩田」という名前は住所からは消えてしまっている。(平成の大合併で上田市に編入になった旧真田町の場合には、いまは「上田市真田町ほにゃらら」のように、旧称を残している。) しかし、塩田平を縦走する上田電鉄別所線の駅名には、いまも「塩田町」が残っている。 ![]() この駅は、かつての塩田町の町役場があったあたりの最寄り駅だ。 というわけで、かつての塩田町の中心街をゆく。 ![]()
旧町役場をすぎて100mほどいくと、塩田平の中心河川、産川が流れている。 「産川」をどう読むかだが、「さんがわ」とする文献と「うぶがわ」とする文献がある。 ![]() 冒頭で書いたように、このあたりは川の水量が少ない。 どのぐらい少ないかというと、こんな感じ。 ![]() これが梅雨時の状態。前日、前々日にも雨が降ってこれ。 ちなみに、この産川が注ぐ千曲川の当日の様子はこう。濁流。 ![]() 写真の場所は、上田電鉄別所線が千曲川を渡る鉄橋なので、 全くおなじ地域といっていいんだけど、これぐらい川の様子が違う。 川の土手には道祖神の碑があった。 ![]() ![]() 向こうに見えている山が独鈷山。 平安時代中期(931年頃)に編纂された『和名類聚抄』では、産川流域=今の塩田平は、「安宗(あそ)郷」と呼ばれていた。九州の阿蘇地方の氏族が大和朝廷から信濃国司として派遣されて住み着いたことからその名があるのだという。なかでもこのあたりを本郷というのは、古代の安宗郷の頃からここがおおもとの集落だったからだと考えられていて、る。 本郷は産川沿いに開墾されて次第に発展して広がっていき、下流側に新田が築かれた。そうなると、もともとの集落地を「上本郷」、新田に形成された集落地を「下本郷」というようになった。 信濃国を代表する神社として諏訪大社がある。6年に一度の御柱祭で有名だ。塩田平の中心神社である生島足島神社は、かつては諏訪大社に次ぐ社格を誇っていたお宮で、ここでも御柱祭がある。その御柱祭では塩田平の各地区が順番に参加するのだが、上本郷地区はその第一座を任されている。そのことが、上本郷地区が塩田平でもっとも最初の地であることを示しているという。 しばらく上本郷の住宅街を進むと、細い道の分岐があり、細い方へ行くように指示がある。 ![]() ![]() この土手を登ると池が見える。 ![]() これが上窪池。 ![]() この上窪池の岸辺に泥宮(泥宮神社)がある。
と、いうわけで、このお社の御神体は目の前にある池である。もう一度見てみよう。 ![]() この池は「上窪池」という。小字も上窪だ。 「上窪池」という呼称は、江戸時代に池の修繕をしたとき以降の呼び方で、それより以前には「泥池」と言っていた。泥池は自然の湿地と沼をもとにつくられたらしく、古代の稲作の名残りを留めているという。言うまでもなく、泥は水田そのものであり、稲を育むものでもある。水が乏しいこのあたりで、いつでも自然に泥が維持されているこの場所は貴重だったのだろう。だからこの神社の御神体は、大地そのもの=泥なのである。 ![]() 看板にもあったように、この泥宮こそ塩田平の稲作の発祥の地であり、生島足島神社はもともとここにあったのではないか、という説もある。 泥宮の近くからは弥生時代後期の土器が多数出土しており、生島足島神社が実際にここから遷座したかどうかはともかく、ここが古くから祭祀の場所だったことは間違いない。 ![]() この写真をよくみていただくと、鳥居の左側の柱の向こうに写っているのだが、 境内に石碑がある。 これが「塩田鯉発祥の地」の石碑だ。 この上窪池は、塩田平での鯉の養殖が初めて行われた場所なのである。 ![]() 産川の水が少ないことからもわかるように、塩田平は本来は水の乏しい地域だった。 古代から水の確保が問題だった。だから泥池のように、無数の溜池が作られてきた。 それでも明治や大正時代には渇水に苦しんだのだという。 大正末期に遂に、塩田平の外側、東の二ツ木峠の山向うを流れる依田川から水を引こうということになった。そちらの川筋の村々の反対もあって計画はなかなか実現せず、20年かかって送水管の整備が実現した。これによって塩田平は豊かな水郷地帯に姿を変えた。 ![]()
【長野県神社庁データ】
【関連寺社】 *生島足島神社 【参考資料】 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 【リンク】 *発祥の地コレクション(塩田鯉) *上田情報蔵(上窪池と泥宮神社) * 川とわたしたち(塩田の用水) *オコジョの散歩道(塩田平 古代の夢?T泥宮神社) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
参拝日:2005年08月01日 |